NukeのVariableを活用したマルチショットコンポジットワークフロー
Ben Dair(Foundry VFX & アニメーション担当 シニアディレクター)
アカデミー賞®視覚効果賞を受賞したジェームズ・キャメロン監督による『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』では、3,132ものVFXショットが使用され、197分におよぶ本編のうち、VFXが一切使われていないシーンはわずか7秒しかありません。このような大規模なデジタル制作や膨大なVFXショット数は、今や珍しいものではなく、業界標準となる中、アーティストには、限られたリソースの中で、より多くの作業をより短期間でこなすことが求められています。さらに、スタジオからはこれまで以上に高品質なビジュアルが求められる一方で、制作予算やスケジュールはますます厳しさを増しています。こうした課題に応えるのが、NukeのVariablesを活用したマルチショットコンポジットワークフローです。

Variableを活用したワークフローでは、ショットに関する情報をアセットに埋め込むのではなく、値として保持し、シーケンスや作品全体で再利用できます。現在では、多くの業界標準のデジタルコンテンツ制作(DCC)アプリケーションがVariableを活用したワークフローに対応しています。一方、コンポジット作業では、これまで手作業に頼る場面が少なくありませんでした。Foundryはこうした重要性に着目し、NukeにVariableを活用したワークフローをネイティブでサポートする機能を導入しました。これにより、コンポジターはマルチショットワークフローをより手軽に活用できるようになり、反復的な作業を削減しながら、ショット間の一貫性を維持しつつ、よりクリエイティブで付加価値の高い作業に多くの時間を充てられるようになります。
Nukeにネイティブ対応したVariableを活用したマルチショットワークフロー
大規模な制作にも対応できるNukeは、VFX業界で定番のコンポジットソリューションとして長年にわたり活用されてきました。Foundryは2007年のリリース以来、継続的に機能強化を重ねてきました。その一環として、現代のVFX制作に求められるマルチショットコンポジットに対応するため、アーティストがショット階層を直感的に把握できるよう、ユーザーインターフェースの設計を大幅に刷新しました。
Nukeのマルチショットコンポジットワークフローの中核となるのが、Graph Scope Variablesです。大量のショットを効率的に管理できる仕組みとして、レンダリング時のエフェクトの切り替えや、広告制作における地域ごとのフォーマット管理、さらには長編作品で複数のショットに同じVariableを適用するといった作業を効率化します。さらに、直感的に操作できるインターフェースパネルにより、マルチショットシーケンスの設定に必要なVariableだけを一覧表示できるため、効率的に設定・管理できます。

Graph Scope Variablesを使用すると、1つのスクリプト内で複数のコンテキスト(Scope)のデータを定義・保持・参照できます。これにより、バリエーションごとに個別のスクリプトを作成する必要がなくなり、より効率的で拡張性の高いワークフローを実現できます。Variableを活用することで、大規模な制作にも柔軟に対応しながら、煩雑で時間のかかる作業を効率化し、プロジェクト全体の一貫性を維持できます。
納期の短いエピソード作品では、マルチショットワークフローを活用することで、小規模なチームでも数百におよぶVFXショットをより短期間で仕上げられるようになります。また、一般的な長編アニメーション制作では、最大で半数近いショットへの変更を自動で反映できるため、アーティストはより細かな品質調整に集中できます。

マルチショット機能を実制作で活用
Skydance Animationは、Netflix向け長編アニメーション映画『Spellbound』の制作において、Nukeのマルチショット機能をいち早く実制作へ導入したスタジオの1つです。
コンポジットスーパーバイザーのAlberto Juarez氏は、次のように語ります。「マルチショット機能によって、1つのスクリプトで複数のショットを扱えるようになり、作業効率が大幅に向上しました。また、適用した変更内容も保持されるため、ショットグループ全体で一貫性を維持できました。」
さらに、このワークフローにより、Skydanceのコンポジターは新しいスクリプトを開くことなくショットを切り替えられるため、制作の流れを途切れさせることなく作業を続けられるようになりました。また、一度行った作業を繰り返すことなく、複数のショットへ変更をまとめて適用できるようになりました。

Juarez氏は、マルチショットワークフローの効果を最大限に引き出すには、ソース素材の一貫性が重要だと強調します。「同じスクリプトで扱うショットは、すべて同じレイヤー構成になっている必要があります。そのため、事前の準備が非常に重要です。もちろん、マルチショットワークフローを導入する際には考慮すべき点もあります。しかし私たちにとっては、まさに求めていたワークフローであり、導入した価値は十分にありました。」
VFXワークフローのさらなる進化へ
マルチショットワークフローは、コンテンツ制作のさまざまな工程で、アーティストの作業効率を高めるとともに、よりクリエイティブな制作を支えます。こうしたワークフローは、VFX制作のさらなる進化に欠かせない重要な基盤です。Foundryはその実現に向けて、NukeでVariableをネイティブにサポートし、より柔軟で効率的なマルチショットワークフローを実現しています。
Nuke のマルチショットコンポジットワークフローについて詳しくは、チュートリアルをご覧ください。


