エピソード型アニメーション制作におけるライティング課題:ライティングとコンポジットの間をつなぐには

テレビシリーズに夢中になると、登場人物に共感し、背景までが記憶に残る。さらにのめり込むと、関連グッズを買うほどのマニアになったり、面白いシーンをSNSで共有し始めたりするが、お気に入りのアニメーションが完成するまでにどれほどの労力が注ぎ込まれたのか、十分に理解されていない場合が多い。

ライティングアーティストの在り方と難しさの両方を理解する私たちは、エピソード型アニメーション制作におけるライティング課題について、作業時間を節約し、作業効率の向上を図るためのソリューションとヒントやコツを紹介してきた。

エピソード型アニメーションプロジェクトに携わるライティングアーティストとして、ここでは起こりうる問題に対して、事前にどのように準備し、解決できるかについて紹介する。ライティングやコンポジット部門を何度も経由しながら、プロジェクト全体のルックの一貫性を保つにはどうすればいいのか。複数のショットにまたがる変更を効率的に行うにはどうすればいいのか。

一緒に見てみよう。

ライティングとコンポジットの橋渡し

エピソード型アニメーションに携わる際には、速いペースで作業を進める必要があることはご存知の通りだ。多くの変更を迅速かつ効率的に行わなければならないが、どれだけ完璧なワークフローや時間管理スキル、テクニックがあったとしても、自分ではコントロールできないこともある。レンダリングが完了してからNukeのようなコンプツールに渡し、結果を確認するというのは、今や過去の話だ。

Katanaに搭載されているNuke Bridgeを利用すれば、NukeのレンダリングをKatanaにストリーミングして、コンプ後のイメージからライティングがどのように反映されているかをほぼリアルタイムで確認することができる。Nukeを起動することなくコンプされたイメージをKatana上で確認したり、レンダリングとコンプ結果を比較しながらライティングやマテリアルの調整を繰り返すことが可能となっている。

Nuke Bridge in Katana

このNukeプロセスをKatanaから起動するにはどうすればよいのか。これには3つの方法があり、Nuke Bridgeタブの一番下にあるPreview Comp、Live Comp、Interactive Compを必要に応じて選択可能で、そのうち2つのモードは完全にリモートで実行できる。

ルックデベロップメントとライティングはライティングソフトウェアで生成されるが、かなりの部分はNukeでも処理される。つまり、シーンのライティング作業はライティングソフトウェア内だけで完結するのではなく、その結果を次の段階(またはNukeアーティスト)に、確実に渡さなければならない。それは、設定したライティングがコンプ作業に必要十分な内容であることが求められるということだ。

KatanaとNukeの相互運用によって、KatanaでのイテレーションをすぐにNukeでプレビューできるため、より高速かつ効率的なライティングが可能となる。必要なものだけをレンダリングすることができれば余計なレンダリング時間を省き、ハードドライブの節約にもつながる。ライティング工程からはコンプで必要とされる十分なクオリティでデータを提供することが重要だ。

提供される主要な情報の例としてAOV (Arbitrary Output Variables)がある。ビューティパスの一部としてデータが計算され、多少の出力コストを伴うが、Nuke BridgeではAOVも利用できるためコンプ作業の効率化にもつながる。まずは、AOVの設定方法をご覧いただき、その素晴らしさを実感してみてほしい。一度設定すれば、パイプライン全体で他のアーティストとともに使用することができ、Nukeへの移行もスムーズに行える。

スタジオの規模や予算に関係なく、またコンポジターと共同作業を行う場合も、自分でコンプ作業を行う場合でも、Nuke Bridgeはライティングとコンポジットの相互運用性を実現する大きな一歩となる。

作業時間の節約

これまでの記事でも取り上げてきたように、エピソード型アニメーションプロジェクトでライティングアーティストが手がけるショットは膨大な数にのぼる。多数のショットにわたり他のアーティストが加えた変更を即座に視覚的に確認できるようなソリューションがKatanaだ。

Foresight+ in Katana

Nuke Bridgeは、Foresightツールセットの発展型であるForesight+にも対応しており、より簡単かつ迅速で、使いやすいマルチショットワークフローを実現。複数ショットのイテレーションを同時に進行できるため、1ヶ所変更すれば、対応するすべてのショットで効果を確認できる。広範囲にわたる変更も支障なく行え、実質的な生産性の向上につながる。個別のライティング作業では困難な、一連のショットライティングの一貫性が向上し、全体のクオリティを高めることができる。

このForesight+では、アトリビュートの変更が個々のレンダリングプロセスに通知されるようにデザインされており、変更があった場合は影響を受けるレンダリングに対してのみ更新が有効化される。これにより、不要な更新によるパフォーマンスの低下やスローダウンを避けることができる。

Foresight+を使えば、レンダリングジョブ投入のストップ&スタートイテレーションの必要性を減らし、作業しながらマルチショットワークフローをより迅速かつ効率的に機能させることができる。ショット数に関係なく、ショット全体のライティングのルックの一貫性を維持し、変更内容をすべてインタラクティブに確認可能だ。

  • GafferThree in Katana
  • GafferThree in Katana
  • GafferThree in Katana

ワークフローの補完

これまで述べてきた通り、エピソード型アニメーションプロジェクトに携わるライティングアーティストは、パイプライン、ワークフロー、全体的なルックなど、常に難しい課題に対峙しなければならない。その中核にある反復作業をいかに効率的に行うかということが、こうした課題の解決策を探る上での糸口となる。

Katanaの強力なツールセットと、ヒントやコツ、実用的なソリューションを使えば、ワークフローの効率化と強化を図ることができる。作業時間の節約、生産性の向上を実現できる。反復作業に充てていた時間をよりクリエイティブな作業に費やし、他部門や他のライティングアーティストとのコミュニケーション、共同作業を効率的に行える。Katanaが提供するツールを試し、活用することで、パイプラインのスムーズな流れを確保し、ライティングとコンポジット間を確実につなぐことができる。障害のない完成されたワークフローは、感動をもたらす作品を制作するうえで不可欠だ。ライティングアーティストは、ただ単にシーンをライティングするだけではない。作品に光を与え、見る者の心を灯すのだ。

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