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スウェーデンのパワーメタルバンド Sabatonのミュージックビデオ制作 - The Agency of Wargaming におけるFoundryツールの活用

Image courtesy of The Agency of Wargaming

MV『Bismarck』制作における、Nuke、Mari、Modoの活用

著名なビデオゲーム会社The Agency of Wargamingの社内広告代理店は、スウェーデンのパワーメタルバンドSabatonのミュージックビデオ『Bismarckの中で、歴史にその名を残すドイツの伝説的軍艦ビスマルクを現代のテクノロジーを用いて見事に再現しました。

一見何の結びつきもないように思われる両者ですがともに歴史への関心が強く、特に第二次世界対戦のドイツ海軍の戦艦をモチーフにした本作でのタッグは、これ以上ない組み合わせと言えるでしょう。

The Agency of Wargamingは、World of Tanks、World of Warships、World of Warplanesなど、World ofシリーズに代表されるミリタリーゲームの開発で世界的に知られており、本作でのコラボレーションは、そのモデリング、テクスチャリング、CGのスキルが高く評価された格好で実現したものです。

今回のMV制作はWargamingの社内代理店がアイディア、スクリプト、撮影、ポストプロダクションなどの制作全般をフルサイクルで支援し、そのCG制作においてNukeやMari、ModoといったFoundry製品が活用されました。それぞれの製品を使用するアーティストに、本作品制作におけるFoundry製品の活用について話を伺いました。

Image courtesy of The Agency of Wargaming

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Nukeの活用

以下Wargaming社サイトより転載 :

「私たちは作品のクオリティ、技術力の高さには自信を持っており、これまでアートや教育目的のために技術の提供なども行ってきました。今回縁があって、素晴らしいパワーメタルバンド Sabatonと高精細な3D戦艦モデル制作を得意とする私たちがコラボレーションし、彼らの楽曲『Bismarck』のMVにおいてドイツ海軍史の象徴的存在であるビスマルクの物語を描く機会をいただきました。」

The Agency of Wargamingは、この壮大な物語の65にも及ぶショット(33のフルCGショットと32のVFXショット)のコンポジティング、テクスチャリング、モデリングに業界最先端のツールであるNuke、Mari、Modoを活用して効率的なプロダクションワークフローを実現し、15人の制作体制で1日平均1ショット、70日間ですべてを完成させました。

The Agency of Wargamingが設立当初から使用し、同スタジオにとって欠かせないツールとなっているNukeは、本作においても大きな役割を担いました。

Image courtesy of The Agency of Wargaming

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「正直なところ、Foundryのソリューションなしでは私たちのプロダクションパイプラインは成り立ちません。」このプロジェクトのCGスーパーバイザー Andrey Bogdanovich氏は言います。「Mariなしでは映画やシネマティッククオリティのフォトリアルなテクスチャは表現できませんし、大規模で複雑なシーンのコンポジティングはNukeなくしては不可能です。」

The Agency of Wargamingのコンポジティングチームは、通常は正社員のコンポジター2名で主にシネマティックトレーラーや短い広告映像の制作をメインに行っていますが、SabatonのMVのような大規模プロジェクトの場合には技術要件に応じてコンポジターを増やして対応しています。

『Bismarck』の制作にあたっては、キーイングやマッチムーブ、クリーンアップ、3Dコンポジティングなど、あらゆるタスクにNukeが活用されました。同作品のようなプロジェクト制作にNukeが最適なツールである理由について、3DコンポジティングアーティストのKonstantin Brailov氏は次のように話します。

「ネーミングでもプロジェクト構築でも、Nukeはカスタムスクリプトを利用してパイプラインの構築や最適化、ニーズに応じたツールの調整が可能ですから、チーム内のコラボレーションが効率的に行えます。」

「またNuke Studioのエクスポート機能とタイムラインのおかげで、プロジェクトの開始から完了までのコンポジティングパイプライン全体を通して、納期直前の繁忙期は特に、作業に集中することができました。」

Nukeの数々の機能の中でもこの巨大プロジェクトの制作に欠かせない存在であったものの一つが、プリセットの読み書きによってパイプラインにカラーワークをスムーズに維持することができるACES です。「ACES Viewerはハイライト部の白とびがなくクリアな画像表示が行えます。」とBrailov氏は言います。

さらにNukeの3Dワークフローには、重いCGを扱う大規模なプロジェクトにおいて作業効率化を実現するさまざまな機能が搭載されています。「パーティクルやジオメトリのインポート&エクスポート、カメラトラッキング、DepthToPointsなどを使えば、炎やたなびく煙といったエフェクトをピンポイントで追加することができます。」

Image courtesy of The Agency of Wargaming

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Wargamingが一貫して提供する高品質シネマティクスの制作に、ゲームエンジンではなくNuke/NukeStudioが活用されいたというのはきわめて興味深い話です。

「ゲームエンジンを使用した高品質なリアルタイムレンダリングは、エンターテインメント業界にとって大きな前進です。」Brailov氏は言います。

しかし『Bismarck』やThe Agency of Wargamingが扱う大規模プロジェクトにおいては、迅速なプロダクションワークフローや厳しい納期、高いクオリティ要求に対応するうえで、Nukeは不可欠なツールです。

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Mariによるテクスチャリング

歴史的にきわめて重要な出来事を正確に描き、オマージュを捧げる意味で、使用するアセットには最大限のディテール表現が求められました。

The Agency のCGチームはクオリティ要求を満たすために、船体や砲台、戦闘機、独・英両軍の兵士など、すべてのオブジェクトと背景のテクスチャリングにMariを使用しました。

プロシージャルワークフローのさらなる向上を実現すべく Mari 4.5で導入されたMaterials Systemは、『Bismarck』プロジェクトのテクスチャリングに貢献しました。

Mariのプロシージャリズムの活用について、CGジェネラリストのIlya Klishin氏は次のようにコメントします。「ノードグラフでマスクのプリセットを多数作成し、マルチレイヤシェーダを使って異なるタイプのスクラッチや汚れの表現に活用しました。」

他のツールでは実現できないMariの優位性について尋ねてみると、次のような答えが返ってきました。「Mariは膨大なテクスチャを効率よく扱うことができます。The AgencyではACEScgカラースペースを使用しており、異なるソフトウェア間でのテクスチャのやり取りを正しく行うことがきわめて重要なのですが、Mariのおかげで非常にうまくいっています。」

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Modoを用いたモデル制作

もちろんこうしたことは全て、高品質なメッシュやモデルあってのものです。CGジェネラリストとしてこの作品に携わったDmitry Udovenko氏は、モデリング、UV展開、リトポロジにModoを使用しました。

「Modoの使用を決めたのは、ジオメトリが非常に扱いやすいからです。」Udovenko氏は言います。「例えば、ポリゴンエッジをスプラインに、スプラインをジオメトリにといったジオメトリタイプの変換が簡単です。」

「ModoはデフォルトのUIレイアウトも使いやすく、とても優れています。フォルダを使用してジオメトリを簡単にグループ化することもできます。複数のメッシュを一つに結合したり、分離したり、ジオメトリの一部から別のメッシュを作成したりといったことが、本当に簡単にできてしまいます。」

『Bismarck』プロジェクトでは比較的小規模なチームで短納期に対応しなければならなかったため、いかに効率的にプロダクションワークフローを回すかがカギになりました。Modoはそうした開発ペースに対応するうえでも重要な役割を果たしました。

「Modoの便利なUIのおかげで、他のソフトウェアに比べてはるかに効率的な作業環境を実現できました。作業に必要なレイアウトを使用し、整理されたワークスペースで常に快適に作業を進めることができました。」

厳しい納期にもかかわらず、The Agencyの制作チームはこの大作プロジェクト制作を大いに楽しんだ様子です。

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