アーティスト スポットライト: Miguel Guerrero

Image courtesy of Miguel Guerrero

映像制作に情熱を注ぐクリエイター

ベネズエラのメリダで生まれたMiguel Guerrero氏は、Escuela de Medios Audiovisuales (ULA)で映画を学び、在学中に短編映画やインディープロジェクトで技術を磨きながら、VFXへの情熱を燃え上がらせた。

短編映画やTV番組の制作を行なっていた小規模アニメーションスタジオ、Lulomotionで最初のVFXの仕事を得ることができたのも、そうした情熱と真摯な姿勢があったからだ。さらに研鑽を重ねたGuerrero氏は、2015年にFoundryのNuke Non-commercialコンペティションで優勝した後、TheFridge.tvでシニアNukeコンポジター兼/レイアウトスーパーバイザーとして活躍している。TheFridge.tv.

Courtesy of TheFridge.TV

現在ブリュッセルに拠点を置くGuerrero氏は、『正義のレジスタンス』、『エレメント・シスターズ 4分の1の魔法』、『リーサル・ソルジャーズ』など、多くのヨーロッパ映画に携わってきた。また、Gustavo Dudamelの指揮によるロサンゼルスフィルハーモニーのコンサート「真夏の夜の夢」(2015年ロサンゼルスのハリウッドボウル、2019年ニュージャージー州 プリンストン大学、2019年スペインのカステル・デ・ペララーダの3箇所で開催)や、「天地創造」(2016年ロサンゼルス ウォルト・ディズニー・コンサートホール)における見事なプロジェクションマッピングインスタレーションの制作も手がけた。

Guerrero氏の信じる「コミュニケーション、コネクション、アイディア共有のための手段としてのストリーテリングの力」は、自身の短編作品やプロジェクションマッピングなど、作品全体に反映されている。VFX作品におけるNukeの役割や2015年以降の活動について、話を聞いた。

Q: Nukeの使用、習得のきっかけや他のソフトウェアとの連携について教えてください。

A: ベネズエラのLulomotionで働いていたときに、グリーンスクリーン上のストップモーションキャラクタと2.5Dデジタル背景を組み合わせた短編アニメーション映画を制作するために最適なソリューションを探していました。当時は、Nukeについて聞いたことはありましたが、実際に試したことはなかったので、デフォルトのツールであったAfter Effectsから乗り換える価値があるかどうかを判断するために、プロデューサーに頼んで1週間試しに使ってみることにしました。

正直に言うと、当初はAfter Effectsでの作業に慣れすぎていたため、Nukeへの移行については不安があったのですが、すぐにNukeがプロジェクトに最適なツールで、習得も容易であることに気がつきました。ノードベースシステムと完全な3D環境が、非常に理にかなっていたのです。数日後には採用を決定し、それ以来ずっと、ほとんどのプロジェクトでNukeを使用しており、必要に応じてHoudiniやAfter Effectsと併用することもあります。

Courtesy of Miguel Guerrero

Q: プロジェクトにおけるNukeの使用頻度や利点について教えてください。

A: Nukeは私にとって欠かせないツールで、ほぼ全てのプロジェクトで活用しています。初期コンセプトから最終イメージまで、プロジェクトのあらゆる段階で使用しています。安定性が高く、イテレーションや新しいバージョンの作成が簡単に行えるので、非常に気に入っています。一度プロシージャルな作業に慣れてしまうと、もう後戻りはできません。

Q: 2015年にNuke Non-commercialコンペティションで優勝してから、ご自身の仕事にどのような変化がありましたか。

A:2015年のNuke Non-commercialコンペティションに参加したとき、私は人生の岐路に立っていました。当時ベネズエラは今日まで続く深刻な経済危機に直面しており、多くのベネズエラ人同様、私は自分の将来に不安を感じ、作品作りを続けられる可能性を模索していました。受賞後、貯金をすべてつぎ込んでベルギーのポストプロダクションスタジオ The Fridgeでのインターンシップに応募することにしたのですが、これによって多くの可能性が開けました。

ヨーロッパの素晴らしいプロジェクトに参加する機会もいただきましたし、Gustavo Dudamel指揮によるロサンゼルスフィルハーモニー演奏会のプロジェクションマッピングインスタレーションの制作も、それ以来、続いています。近いうちに、自分自身のプロジェクトのディレクションも再開したいと思っています。

Miguel Guerrero side-by-side
Miguel Guerrero side-by-side

Q: プロジェクションマッピング制作におけるNukeの使用とその活用法について、教えてください。

A: プロジェクションマッピングのプロジェクトでは、After EffectsとNukeを併用しています。コンセプトの作成と反復的なタスクの自動化はNukeで行い、必要なモーショングラフィックスはAfter Effectsで行うというスタイルです。

一コマ一コマ最適な表現方法を模索しながら、自由かつクリエイティブに映像制作を進める上で、検討作業は不可欠です。迅速なイテレーションが行え、変更・修正をスムーズに反映できるのは、Nukeの強みです。

プロジェクションマッピングで直面する典型的な技術課題の一つに、投影場所と投影面の違いが挙げられます。プロジェクターの解像度はコンサートによって異なりますが、 Nukeは変更や調整が簡単に行えます。

Q: プロジェクションマッピング制作は、映画やTVのVFX制作にどのように役立ちますか。

A: 特に、魔法やパーティクルなどのクリエイティブなエフェクトの制作時に役立ちます。また、技術的な課題に取り組む際に、より柔軟な視点からツールを見ることができます。プロジェクションマッピングで行っているのと同レベルの検討作業や迅速なイテレーションを、従来のVFX制作にも取り入れており、用途に縛られずにツールを活用するようにしています。

Miguel Guerrero side-by-side
Miguel Guerrero side-by-side

Q: ご自身の代表作について、また、その作品を選んだ理由について教えてください。

A: この仕事の素晴らしさは、素晴らしいチームとともに素晴らしいプロジェクトに携わることができることであり、その中から特定の作品を選ぶのは難しいのですが、コンサート「天地創造」用に制作したプロジェクションが、ロサンゼルスのウォルト・ディズニー・コンサートホールでLAフィルの演奏に合わせて投影されるのを見たことは、忘れられない素晴らしい経験でした。

現在、The FridgeではUnityとそのリアルタイム機能を使い、長編映画『Journey to Yourland』の制作を行なっていますが、その中で多くの技術的課題に直面し、リアルタイム制作の可能性を実感している。また、個人的な作品である短編映画『Angela』も完成間近です。このプロジェクトを通して多くの学びがあり、ともに成長してきましたから、私にとってとても特別な作品です。

Q: Nukeの機能の中で最も便利だと思うものと、その理由を教えてください。

A: 3Dカメラプロジェクションをよく使いますね。パーティクルシステムには何度も助けられましたし、Smart Vectorの実装により、複雑なエフェクトを実現できるようになりました。

また、3Dビューポートでの作業や2.5Dエフェクトとアニメーションのコンポジティングは、仕事をするうえで欠かせません。

Q: 今後、Nukeに実装を期待する機能はありますか。

A:反復的なタスクの時間短縮を図るマシンラーニングの実装が楽しみです。パーティクルシステムは非常に実用的ですが、安定性と制御性を高める必要があります。

まだ試してはいませんが、新しいHydraビューポートは期待ができそうですね。

VFX by Umedia Visual Effects, copyright by Maipo Film

Q: Nukeの購入を検討しているアーティストにアドバイスはありますか。

A: Nukeは業界標準のツールですから、VFXの仕事をしたいのであれば必須です。

非商用版は、初心者が試用期間を気にせずにNukeを学び理解を深めることができるので、非常に実用的です。また、Nuke Indieは、フリーランスのアーティストが商用プロジェクトで使用するのに最適です。

現在はたくさんのドキュメントや素晴らしいチュートリアルがオンラインで提供されていますから、かつてないほど簡単にNukeを習得できるようになっています。私がNukeを使い始めたときは、After Effectsの経験があったので、After Effectsユーザー向けのチュートリアルのおかげで楽に移行が行えました。

Q: VFX業界で仕事をしたいと思っているアーティストに何かアドバイスはありますか。どのようなチャンスを探るべきでしょうか。

A: スポンジのように、知識を貪欲に学び取る姿勢が大切です。この業界は非常に動きが速く、技術の進歩が推進力となっていますから、常に最新の情報を把握しておく必要があります。

基本的なことをきちんと学んでおけば、キャリアの中でソフトウェアや役割を変更する必要が生じたときに、その知識を活用することができます。ツールをただ使うのではなく、その内部構造を理解することが重要です。オンラインで進捗状況を公開したり、憧れのスタジオのインターンシップに応募したりするのも良いでしょう。

Q: 業界やコンポジティングに関する今後のトレンドで特に期待しているものはありますか。

A: マシンラーニングやリアルタイムレンダリングツールを使って、どのようなことが実現できるようになるのか、とても楽しみにしています。ゲームエンジンを使用して俳優をリライティングしたり、セットで背景をプレビューしたりすることは、大きな前進です。

フォトグラメントリーとプロシージャルモデリングは異なるアプローチではありますが、今後軸になる技術として期待しています。よりスピーディに3D世界を構築でき、同時に生産性を高めることができるツールであればどんなものでも大歓迎ですよ。

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