シニアコンポジターに必要なスキルとは?

競争の激しいVFX業界でジュニアコンポジターとしてキャリアをスタートさせ、さまざまなプロジェクトに携わってスキルを身につけたミッドコンポジターが、数年後、シニアコンポジターになるにはどうすればいいのか。

より責任あるポジションへステップアップするためには、経験だけでは不十分で、それに見合うスキルや資質が求められる。この記事では、ミッドコンポジターからシニアコンポジターへのキャリアチェンジの際に期待されること、あると望ましいスキル、チームの一員としてのシニアコンポジターに必要とされる資質について紹介する。

Foundryの元Nukeプロダクトマネージャーで、現在 DNEGのシニアコンポジターであるDavid Nolanは、10年以上の業界経験を持ち、『アベンジャーズ』、『スター・ウォーズ』、Netflixの『スクール・フォー・グッド・アンド・イービル』など、数々の主要映画シリーズに携わってきた。そんなDavidに、シニアコンポジターを目指す人たちに向けに、キャリアアップのために身につけるべき必須スキルについて、専門知識に基づいたアドバイスを聞いた。

ステップアップ

中堅からシニアのポジションになる際に、Nukeのような業界標準のコンポジットツールを使いこなせることは前提として、身につけておくと便利な技術力についてはもう少し後で説明するが、ここでは、シニアコンポジターという役割において成功するために習得すべき重要な事柄について説明する。

Communication - soft skills

「カギはコミュニケーションにあり」というのは、単なる決まり文句ではない。トップレベルの仕事をするためには、全員が同じゴールに向かって作業を進め、シークエンスのすべてのショットが一貫した美的統一性を保つ必要があるため、作業内容を共有する他部門やチーム内の他のコンポジターとコミュニケーションを取り合い、連携を図ることが非常に重要だ。しかし、これはもちろん簡単なことではない。

David Nolanは次のように話す。「日々の定例のチームミーティングで作業進捗を確認し、スーパーバイザーからフィードバックを得ることが大事です。コミュニケーションはこの業界では誰にとっても重要ですが、上を目指すのであればなおのことです」。

コミュニケーション能力の他に、シニア・コンポジターには幅広い経験としっかりとした職歴が求められる。ショーリールは、自分がやりたい仕事や働きたい分野に合わせて作成するべきだろう。スピーディーな作業が求められるCMから、ピクセルレベルの超高精度を重視する映画、両者の中間に位置するエピソード作品まで活動の幅は広いが、どの道においても、複雑なショットに対応する処理能力や問題解決力に長けていることを示さなければならない。

David Nolan Quote

「解決法を知ることと、なぜその方法を取るのかを知ることには大きな違いがあります。若手アーティストを指導する際には、ツールの操作よりも、なぜライトを追加する必要があるのか、なぜ影ができないのかといった、シーンの課題にフォーカスさせるべきです。そうした経験が将来的な課題にも活きてくるのです」とDavidは言う。

「ショットは課題にあふれています。経験やスキルが増えるほど、そうした課題に対して多くの解決策を持つことができます」。要するに、割り当てられたショットを分析し、必要に応じた最適解を選択することが求められるわけだ。また、さまざまなステークホルダーと調整を行いながら、他部署とコミュニケーションを取りつつショットのクオリティを高めていかなければならない。

スキルアップ

次に、シニアコンポジターとしてあると望ましい、ワークフローを支えることができる技術力について詳しく説明しよう。

中堅からシニアレベルになる頃には、Nukeの主要スキルや機能をしっかりと把握し、どんなショットやタスクにも対応できるようになっておく必要がある。しかし、より快適に作業を行うためには、Gizmoの作成と利用について習得しておくべきだ。

NukeのGizmoを使用すれば、ノードグラフの一部をひとつにまとめて、プロジェクト、チーム、Nukeスクリプト間で簡単に共有することができる。Gizmoの柔軟性と汎用性を解説するチュートリアル 再利用可能なツールの作成は、Gizmoについての理解を深める上で役立つだろう。

Creating Reusable Tools

Gizmoの使い方を知ることの重要性について、Davidは次のように説明する。「キャリアを積み、ルックデベロップメントやシークエンスを任されるようになると、チームのメンバーが使いやすい形でツールを配布することが非常に重要になります」。

また、Pythonのコードを書いて、新しいPython APIを活用するスキルも有用性が高い。「Pythonの専門家である必要はありません。社内のPythonに詳しい人にアドバイスを求めることはできますが、少しコードが書けて作業を効率化したり、ツールを使いやすくしたりすることができれば、自身やチームのワークフローのスピードアップが図れます」とDavidは言う。

情熱をかたちに

つまり、シニアコンポジターとして活躍するためには、自身の専門性をアピールできる技術力と、生産的かつ効率的な共同作業に役立てるための対人スキルの両立が不可欠だ。Nukeのような業界最高水準ツールを活用し、ワークフローの改善や課題の解決におけるGizmoやPythonといった機能の有用性について、深く理解することがきわめて重要となる。

David Nolan Quote

実務の中で一つひとつを丁寧に行った仕事の積み重ねが、 自らのキャリアアップと自信につながっていく。そして、それがひいては後進の育成、業界の発展に貢献することになる。

 

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