Framestoreによるマーベル・スタジオ 『ソー:ラブ&サンダー』の制作

雷神ソーの活躍を描くシリーズ第4作でNukeを活用

前作『マイティー・ソー:バトルロイヤル』に続き雷神ソーの活躍を描いた超大作『ソー:ラブ&サンダー』は、うるさすぎるヤギ、ミョルニルにストームブレイカー、女性版ソー、ゼウスのゲスト出演など、最初から最後まで見どころ満載の超絶バトルアクションだ。

多くの偉大な作品がそうであったように、派手な戦闘シーンや壮大な銀河は、この大作の全ショットを完璧に仕上げたVFXアーティストチームの影ながらの尽力があったからこそ実現したものだ。この大仕事を担ったのは、『エルヴィス』や『ダーク・マテリアルズ/黄金の羅針盤』などの数々のプロジェクトを手がけてきたFramestore、そしてそれを支えたのがFoundryのコンポジットツールNukeだ。

FramestoreのコンポジティングスーパーバイザーであるMark Braithwaite氏は次のように話す。「Nukeは、FramestoreのVFXパイプラインの中核をなすものです。コンポジットだけでなく、スキャンの取り込みから最終フレームの納品まで、イメージを管理するほぼすべての工程で欠かすことができないものになっています。Nukeは、拡張機能を構築してもアプリケーションの中核部分は変わらないため、トレーニング時から使い慣れた基盤を使うことができますし、本作でもそうであったように、作品の課題や規模に応じた対応が可能です」。

Thor

バトルシーンの制作

これまでも『ミズ・マーベル』や『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』など、マーベル・スタジオの作品を手掛けてきたFramestoreにとって、人気作品に携わるのはこれが初めてではなかったが、克服しなければならない課題がなかったわけではない。

「超大作クオリティのコンポジットが求められるショットの物量にかなり苦労しました」とBraithwaite氏は言う。「ゼウス率いるスパルタ軍との戦闘シーンのようなメインシークエンスを最後まで目が離せないものにするためには、アーティストが共同で作業できるコンポジットツールが必要でした。Nukeはツールやテクニック、スクリプトの断片などを共有できるため、シークエンスバーを大きく上げてもショットを同期させることができました」。

さらに、見応えのあるバトルシークエンスを作り上げるのは非常に骨の折れる作業が必要だった。インディガーでのバトルシーンの課題となったのは、ショットの構成要素の多さだ。メイクアップの修正、インディガー人の顔、メインキャラクターのCG、背景の群衆、背景セットとデジタルマットペイント、デジタルダブル、クロマキーエレメント、降灰や燃えさし、ブースカンやホバーバイク、レーザービーム、爆発、煙、ダストトレイル、反射率・屈折率ともに非常に高い透明かつ虹色に光る神殿、稲妻、ホバーバイクの破壊など、ざっと挙げただけでも1ショットに盛り込まれた要素は相当の数に上った。

Thor with stormbreaker

FramestoreのVFXコンポジターであるIvan Sorgente氏は、「テンプレートと自動化の点で、高い合理性と効率性を維持できたことで完成に漕ぎつけることができ、アクション満載のシークエンスのひとつひとつのフレームにいたるまで、きわめてリアルな表現を実現できたと思う」と説明する。「リードコンポジターのSam Osborne、コンポジターのPatrick Burkeと私の3人は日々のレビューの中で、レンダリング結果やシークエンスの構成要素をチェックするとともに、観客がシーンや台詞を味わい尽くせるような余地が残されているかということに気を配りました」。

Braithwaite氏は「Nukeのノードベースのコンポジットアプローチは、オムニポテンスシティやゼウスの黄金神殿のシークエンスの複雑なショットを実現するためのワークフロー開発に不可欠でした。インハウスで構築し、頻繁に編集したモジュラーテンプレートのおかげでショット間での作業コピーが行え、開発時にシークエンス間の一貫性を維持する鍵となりました」と続ける。

高度なバトルシークエンスに加えて、1000を超える群衆アセットの作成も手間のかかる作業だった。「異なるクリップを組み合わせて、同じアクションでバリエーションを複数作成しました」とCGスーパーバイザーのPrashant Nair氏は話す。「モーションキャプチャで取得した動作に、レイアウトチームがタイムオフセットや小道具で変化を付けて、バリエーションを作成しました」。

 

Groot and Rocket
Groot and Rocket

Nukeの活用

複雑かつ膨大な要素やレイヤーを含むショットも、Nukeのディープコンポジティングツールによって、柔軟性を維持しながら、CGの再レンダリングが頻繁に発生することなくコンポーネントのイテレーションを行うことができた。2D/3Dデータの両方を扱えるのも大きなメリットだった。

「Deepベースの画像からマルチレイヤー2D画像に移動して、3Dに戻ってから再び2Dの画像を出力し、それをジオメトリに変換する、といった具合です。今のところ、他のツールではこんなにスムーズにはいきません。ピクセルの新しい見方ができるようになり、360度に近い実験が可能です」とSorgente氏は説明します。

Boat crashing through window

またこのプロジェクトでは、複雑な作業をこなしてさまざまなエフェクトを実現するために、独自のカスタムツールが作成された。「中でも印象に残っているのは、インディガー人の顔をプロシージャルに操作してよりエイリアンらしくするために使用した、ジオトラッカーを使った顔の生成ツールです」とSorgente氏。

さらにSorgente氏は、「Nukeのメイン機能は、間違いなくパーティクルシステムだと思います」と続ける。「インディガーのバトルシーンでは、全ショットに1つ以上のパーティクルシュミレーションが組み込まれており、パーティクルを使って降灰や燃えさし、ブースカン防衛軍が発するレーザー、インディガー神殿から放たれるミサイルやプラズマボルト、稲妻と地面の相互作用などをプロシージャルに生成しました。Nukeのネイティブパーティクル、BlinkScriptと、Houdiniで生成したAlembicポイントクラウド、アニメーショントリガーを組み合わせて、アクションに合わせてタイミング調整とアニメーションを行いました」。

black and white Thor
black and white planet

マーベル作品に相応しいVFX

Framestoreの素晴らしいアーティストたちは、Nukeを駆使して、マーベル・スタジオに寄せられる期待通りの壮大なファンタジーを作り上げた。

「きわめて精密な計算機をコアとするNukeは、データの扱いや、Nukeを中心にパイプライン全体を比較的簡単に構築できることなど、非常にユニークなソフトウェアと言えます。他部署からデータを取り込んだり、シークエンス全体のルックをプロシージャルに変更したり、フォトリアルなコンポジットを作成したり、クライアントにDI/ステレオ用の出力タイプとチャンネルを多数提供したり、Nukeはきわめて高度かつシンプルに使用できるので、VFX業界にとっては好都合です」。

Framestore quote image

Framestoreでは、Nuke13シリーズでリリースされた新機能についても検証が行なわれた。

「プロジェクトの半ばでNuke13がリリースされた直後に、最終的に生成されたインディガー人の顔をもとにして、試しに機械学習モデルのトレーニングを行ってみました。ソースプレートと最終コンプをすべて集め、週末にワークステーションを離れてCopyCatを使ってトレーニングしました。結果は非常に期待できるもので、次の作品では選択肢の一つとして検討に値するものになると思います」。

Thor captured by Zesus

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